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side燿
「…」
「…」
電車に揺られながら、気まずい沈黙が私と斎希の間に流れていた。
斎希と大喧嘩したあの日から、私は斎希と何を話せばいいのかわからなくなってしまった。
あのあと私たちは頭を冷やすよう自室に放り込まれたので、話が進んだのはその翌日。
十六夜に連れて行かれて向かった広間にはすでに斎希も双葉も来ていた。 斎希は私が入ってきた音に、視線だけこちらに向けたが、すぐにまた前を向いてしまった。
「お二方も、少しは落ち着きましたか」
刹那の声に、ふいと目を逸らす。特に誰もなんの声もあげない。
「発言がないのは肯定と見做します。今一度、皆さんに伺いましょう」
双葉が、自らの記憶を求めることに賛同なさいますか?
わかっている。"皆さんに伺う"のは形だけ。ここは、私の結論を聞く場でしかない。
「私の意見は変わらないわ。双葉のことを応援するし、喜んでサポートする」
「右に同じく」
斎希と十六夜が即答し、捺波も首肯する。そして、全員の視線は私に向くのだ。
「…」
わかっている。正論で考えれば双葉の背中を押してやるのが正解であることくらい。
けど、心配するこっちの身にもなってほしいと思うことは、わがままなんだろうか。
「ひとつ、ききたい」
絞り出すように言葉を紡ぐ。
「記憶と向き合う…ってのは。具体的に…どうする気なんだ」
双葉は頷くと、スケッチブックをめくった。
『わたしがいた場所に行きたい』
「燿。降りるわよ」
「あ、あぁ…わり」
ぼんやりしていた間にどうやら目的地についていたようだ。スッと立ち上がって歩き出す斎希に置いていかれないよう、あわてて立ち上がって後を追い、電車を降りる。
記憶の場所に行くという双葉の提案を、私は即座に反対した。今度ははっきりと。
「反対だ。いきなりそんなことさせられない。やるにしても刹那あたりから話をきくくらいにとどめるべきだ」
しかし、双葉はわかっていたとばかりに首を振った。
『燿ちゃんはそういうよね。わかってた。でもそれじゃあ向き合ったことにならない』
「そんなことはないだろ。なにがあったのか大枠だけでも把握することから始めていくのは順当だ」
『もちろん刹那ちゃんには話を聞く。でもそれだけじゃなにもわからないでしょ』
「なんでそんな急ぐんだよ。お前はずっと苦しんできたんだ。もっとゆっくり負担のない程度に…」
ドンッ
双葉が近くの机を叩いた。響いた音に私は思わず口を閉ざす。
机上のカップに乗せられた角砂糖用のミニトングが振動でがちゃんと落ちる。
双葉は、ゆっくりとペンを走らせた。
『燿ちゃんが、わたしを心配してくれているのはよくわかってる』
『だけど、どうしてただの他人の燿ちゃんが、「わたしが苦しんでるから」ってわたしの道を阻むの?』
『』
