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side十六夜

「...」
「...」
「...」
「...」

...なんだよこれ。
このシュールな沈黙。
今、あたしたちは刹那の部屋の前でドアごしに耳をそばだてている。
これは、ついさっきに起因する。
つい十数分前.........。
「十六夜ちゃあああああん!!」
「ゴハァッ」
悲痛な悲鳴をあげた双葉が突進してきたのだ。
あたしはそのままボディアタックを食らい、床に倒れ伏してしばらく目を回すはめになりましたとさ、めでたしめでたし。
...めでたくないけど、痛いけど。
「はらほろひれはれ~...」
「十六夜ちゃん!十六夜ちゃんってば!」
くらくらしているあたしをガクガクゆすって叩き起こそうとする双葉、意外と鬼。
「ねえ十六夜ちゃん!」
「わかった、わかった...ストップ...酔う...」
「あっご、ごめん...でも大変なの!」
急かす双葉をなんとかなだめすかして(あたしも)落ち着くまで待ってから、話を聞いた。
「で?どうしたの」
「う、うん。また...声が聞こえたの」
「え、なに?呼ばれた?ついにそういう電波拾っちゃった?自分の使命知っちゃった?」
「違うよ!刹那ちゃんの部屋の声のこと!」
声...そういえば、そんな話をしたなあ。
確か、そのときは様子を見ようということで落ち着いたはずなんだけど。
「その声がまたしたっての?」
「そう!そうなんだよ!それもね...」
興奮して要領を得ない双葉の話をまとめると次のようなことらしい。
双葉が刹那の部屋の前を掃除していた時、部屋から声がした。
それは、可愛い男の子といった声で、「うみゃっ!」みたいな感じだったそうだ。
...なんだうみゃっ!って。
そんなツッコミはおいといて、それで双葉が刹那の部屋をノックしようとしたとき、今度は刹那の声で「静かに!気付かれますよ」と聞こえた。
これで双葉は刹那が誰かを隠していることを確信し、そこから......まあ、色々と想像してしまった結果あたしに突進してきたということらしい。
「なるほどねえ...」
「だからさ十六夜ちゃん!刹那ちゃんのとこ行こうよ!今のままじゃ絶対に危ないって!」
何を考えたか双葉は顔が真っ赤だ。
いやほんとに何考えたんだよ...。
ぐいぐいと引っ張ろうとする双葉に抵抗しながらどうするべきか考えた。
つってもそういうの性に合わないから、どうせいい案なんて浮かばないんだけどね。
「なーに騒いでんのさ」
「何かあったの?」
あたしと双葉の騒ぎを聞きつけて斎希と燿がやってきた。
やば、斎希は前に刹那が少年を隠してるかもしれないという話を聞いて放心していた。
今回それが確定したなんて話をされたりなんぞしたらまたどっかに旅立ってしまうかもしれない。
そしてまず間違いなく双葉側につく。
「え...刹那が...男の子を...」
「そうなの!わたし聞いたんだよ!」
「............」
あーほらほらもう旅立ちかけてるじゃないよ!
あたしはさっさと興味なさそうな燿のもとへと退避した。
これ以上あの二人のもとにいたら何言われるか。
「燿~...」
「なんだよ。私興味ないんだけど」
「見ればわかるよそんなん。でもあれどーしたらいいかな」
「知らね。ほっときゃいいじゃん」
「でもあれだけ聞いた聞いたって双葉が言い張ってるから無下にできなくて」
「まあ、双葉の気持ちは尊重したいのは山々だけどね」
ふわりと浮き上がって腕を頭の後ろで組みながら返ってくるやる気なさげな返答にため息が出た。
燿は時折こうして浮き上がっていることがある。
確か前に生来高いところが好きで、任務の時も高いところにいることが多いとか聞いたっけ。
「まあ、燿が興味ないっていうのはよくわかった」
そもそもあてにしてないし、と強がりを言いながらどうするべきかまた考えた。
兎にも角にも双葉と斎希を落ち着かせないといけない。
でも、多分あたしが何を言ったところで意味ないよなあ...。
もうこうなったら双葉の言う通り刹那の部屋に行っちゃうか。
うん、それがいい。
「わかったわかった。双葉がそんなに言うなら付き合うよ。刹那の部屋まで行こう」
横からマジかよと言いたげな視線に無視を決め込んで双葉に引きずられるようにしていき、冒頭に戻る。

双葉と斎希がドアに耳をぴったりつけて中の音を聞こうとしているのを、あたしと燿が静観しているのである。
早くも双葉の言うとおりにしたことを後悔し始めていた。
(なんで私まで付き合わないといけないんだよ。十六夜だけでいいじゃん)
(あんただけ逃げるとかそんなこと許すわけなかろうが!)
視線でいがみ合うあたしと燿はお構いなしに、双葉と斎希は真剣な面持ちでドアに耳を当てている。
なんか、なんなんだろうなあ、これ。
「...部屋帰っていいかなあ」
「賛成」
思わずこぼれた本音に即座に同意してくる燿。
もう二人で部屋帰ろうかなあ。
ここにいたって埒あかないし...。
そんなときだったからか、いつもなら青筋が立つ冷たい声と片言の言葉が救いに聞えたのかもしれない。
「...何をしている...ついに頭がおかしくなったか」
「...どうか...した...?」
「あっ...」
あんたらーーー!という前に、ドア前で頑張ってる二人が般若のような形相で唇に手を当てて振り返ってきた。
怖い、怖いって、斎希はまだしも双葉あんたそんな顔できたの。
面食らったように眉を吊り上げた神流があたしと燿のもとへと寄ってきた。
捺波は不思議そうに首をかしげながらその場でこちらを眺めている。
「...なんだ、あれは」
声が明らかに不機嫌である。
不機嫌になりたいのはこっちだよ。
「かくかくしかじか」
「...お前の頭が飾り物であることだけは伝わった」
「冗談!冗談だって。アニメあるあるなちょっとしたジョークを言っただけでしょ」
「...無駄なことに時間を割くな」
「はいはいわかったよ。...こないだの刹那が誰かを隠してる疑惑あったでしょ」
「...ああ、そういえば...治癒が騒いでいたか」
「そうそう。それで...今日また双葉が明らかに誰かの声を刹那の部屋の中で聞いて、それでどうにかしなきゃってああなってるわけ」
「...ふざけたことを」
一応気遣ってか、二人には聞こえないように舌打ちする神流に口には出さないまでも心の底から共感した。
神流の隣にやってきた捺波は相変わらず不思議そうにしてはいたが、その瞳にはわずかな好奇心が見て取れた。
燿はというと、もはや心がここにない。
なにかこう...遠くの方を見てあたしたちの見えない何かと交信しててもおかしくない状態。
燿...そっちに行ってしまったんだね...。
大丈夫、どれほどの時が経とうとチミのことを忘れることはないさ。
なーんてあたしもくだらないことを考え始めた時。

「きゃっ!」
くだらない思考を双葉の悲鳴が吹っ飛ばした。
なにかと思ってそっちを見ると、双葉がつんのめったらしくそれを斎希が支えているのが見えた。
そして、さっきまでと大きく違うことがひとつ。
ドアが開いているのだ。
当然、理由は中から刹那が開けたから。
「全く、何をしているのですか」
心底呆れたような刹那の声。
そりゃそうだよね、自分の部屋の前でメンバー大集合してしかもそのうち二人がドアに耳付けてたら。
「え、ああ、いや、あはは」
双葉がひきつった笑みを浮かべる。
あーあー...。
燿はやれやれというように頭を手で押さえているし、神流はといえば深ぁぁぁいため息をついていた。
どうすんのかなあ...あれ...。
てか、どうやってこの場を取り持とうかなあ...。
なんて考えていると、斎希がすっと立ち上がった。
「刹那。もうこの際単刀直入に聞かせてもらいましょう」
「あら。なんでしょう?」
どうやらもうバシッと聞いてしまうことにしたらしい。
まあ、そのほうがまどろっこしくなくていいよね。
その後のことを考えないようにしながら成り行きをみることにした。
「双葉があなたの部屋で声を聞いたそうよ。明らかに機材を通した声ではないから依頼人とのやりとりではないと」
「......」
「ねえ、刹那。私たちに何か隠しているんじゃない?」
刹那は答えることなく後ろにいるあたしらを見た。
「なるほど。...あなた方もそうお思いですか」
いや別に。
珍しくあたしと燿、神流の意が一致した瞬間だった。
捺波は...多分わかってない。
そこでようやく双葉も立ち上がった。
「ねえ刹那ちゃん。わたしたち、仲間でしょ?隠し事なんかやめようよ」
真剣な目で必死に訴える双葉を刹那は無言で見つめ返す。
「...ふう、やれやれ。だから言ったのです。秘密などすぐに明るみに出ると」
...え?
マジでなにか隠してたの...?
「ここまで疑われては仕方のないこと。もとより私は隠すつもりなどないのです。お入りください」
あれだけ押せ押せしていた斎希と双葉が、急に怖くなったようで二人で身を寄せ合いながら部屋に入っていく。
さすがの展開に、あたしや燿も興味が出てきたので、後に続く。
あ、そういえば捺波は...と思って後ろを見ると神流が目線で来るように合図していた。
うん、大丈夫かな。
改めて中に入っていく。
全員が来たのを確認した刹那がドアを閉め、すたすたと転送装置に向かって歩いていく。
「あ、あの、刹那ちゃん」
「なんでしょうか?」
「その...新しい人...なの?わたしが聞いた声の人...」
装置の周りを何か探すように覗いている刹那に、双葉が恐る恐る尋ねる。
まあ、そうなるよな。
「そうですね。厳密に言えば人ではありませんけれど」
人じゃない...?
あたしたちがお互い顔を見合わせた。
「そしてもう一つ。厳密にいえば、あなた方の先輩にあたります」
「えっ!」
今のはあたしの声だ。
いやだって驚くやん、そんなことさらっと言われたら。
「あなた方より付き合いは長いのですよ。......ああ、そこにいたのですね」
何か見つけたのかとみてみると、刹那が機械と機材の合間のちーーーーーさな隙間を覗き込んでいる。
......は?
「全く。こうなると見つけにくいですね、あなたは」
隙間に向かって語り掛ける刹那。
え、なにか...なにかいるの?
そんな狭い隙間に。
「ほら、出ていらっしゃい。もう潮時でしょう」
言いながら差し伸べられた刹那の手。
何かと思ってみていると、隙間の中から何かが伸びてきた。
...ひも?触手?
見た感じそんな感じの細長いなにかがゆらゆらと出てきて刹那の指に絡みついている。
な、なんだあれ...。
「駄々をこねるのはおよしなさい。この人たちは怖くないといつも言っているでしょう。それとも私の言うことが聞けませんか?」
刹那の少し強めの言葉に、少し意外に思った。
そういうことも言うんだ...。
「み、」
...?
何か聞えた?
「そう、その調子です」
よく見ると、隙間から何やら脚のようなものが見えていた。
見た感じ、猫...とかかな。
動きはかなりゆっくりだったが、次第に顔が見えてきた。
さっきひもや触手に見えたのは、どうやら触覚?という表現が正しいのかは謎だけど、とりあえずそんな感じのものだったらしい。
綺麗でつぶらな目はなんだかウサギを思わせる。
身体はほぼ白く、なめらかな毛並みをしているのが見て取れた。
これはウサギだな、と確信したころ、その考えが打ち砕かれた。
ウサギ特有の長い耳だと思ったものは、なんと大きな羽根だったのだ。
そこまで出てきたところで、刹那が胴体を掴んで抱き上げた。
最後に出てきた尻尾は、なんと身体と同レベルかそれ以上に長い。
「み、みゅうぅぅぅ...」
刹那は抱き上げたその生物をなでながらどこか嬉しそうに言った。
「紹介しましょう。この子はエルフィア、私のお付きです。人見知りが激しく臆病なもので、本人の希望もあり今まで隠してきたのです」
誰も言葉がなかった。
そらそうだ、こんな生物が謎の声の正体だなんてだれが想像つくもんか。
ただ、これだけは言える。

めちゃくちゃ可愛い。

いやだって...ほんとに可愛い。
いわゆるモフモフ属性だ、嫌いなやつなんているもんか。
「う、うぅぅぅぅ...」
エルフィアがまたか細く鳴いた。
見ればもう目がアメーバのようになっていて、今にも大粒の涙がこぼれ落ちてきそうだ。
自分たちが完全に怖がられてるのはわかる。
けどこういうとき、動物の警戒を解くやり方なんて知らない。
どどどどどうしよう...。
テンパっていると、視界の端で何かが動いた。
思わずそっちを見ると、神流がゆっくりとエルフィアに近付いていくのが見える。
驚かさないよう配慮しているのか、本当にゆっくりと。
「......」
神流は刹那達からだいたい二、三歩ほど離れたところまで行くと、エルフィアに向けて自分の手を見せるようにした。
もちろんこれもゆっくりと。
右手...左手...。
エルフィアも、それを見つめている。
十分に手を見せると、今度は自分のポケットに手を伸ばし始めた。
エルフィアがわずかにびくっとする。
何をするかと思えば、神流はポケットというポケットをすべてひっくり返しはじめたのだ。
「......」
神流がこちらに目配せしてきた。
あたしらもやれということだろうか...。
慌ててあたしもポケットをひっくり返した。
特に何も持ってなくて良かった...。
みれば、双葉も斎希も燿も捺波もやっている。
てか斎希、いくらポケットがないからって袖ひっくり返すことないでしょ。
それを見届けた神流はまたエルフィアに向き直り、今度は前に輪をかけてゆっくりと手を差し出した。
エルフィアはじぃっと神流を見つめている。
その視線に応えるように、神流は柔らかく微笑んだ。
神流があんなふうに笑うとこ、初めて見た...。
思わず凝視していると、今度はエルフィアの方が動いた。
差し出された神流の手を、自らの触覚でちょんとつついたのだ。
神流がより笑みを深める。
大丈夫だ、怖くない。
なんかそう言ってるような気がする。
「み...?」
何もしてこないと判断したのか、今度は触覚が明確に巻きついた。
「ふふ」
刹那も微笑ましそうに優しい笑みを浮かべている。
そして、ついにエルフィアが右前脚を差し出した。
神流は手を動かさない。
少しずつ伸びてきた脚は、とんと神流の手の上に置かれた。
いわゆる、お手のような状況だ。
「...っふ」
優しい笑みのまま、神流はエルフィアを見つめている。
エルフィアは今度は左前脚も神流の手に乗せた。
ここで、ようやく神流が動いた。
両脚が乗せられた右手はそのままに、左手でそっとエルフィアをなでたのだ。
エルフィアも特に抵抗することなくされるがまま。
「...」
そして最後のステップ。
神流は撫でていた左手と、差し出していた右手をエルフィアの胴体に移動させ、軽く触れた。
さすがにびくっとするエルフィアに、神流はその動きを止めた。
プルプルと震えていたエルフィアも、次第に慣れてきたのか震えが収まっていく。
それを見た神流は、止めていた手をまた動かしてエルフィアを胴体をそっと抱き上げた。
刹那の胸から神流の胸に移動したエルフィアは、少々居心地が悪そうにはするものの特に暴れるような様子はなかった。
「エル。その人は神流といいます。ね?怖くないでしょう」
エルフィアは刹那と神流を交互に見て、やがて小さくうなずいた。
「そして、奥の皆さんも神流さんと同じ。優しい方々ですよ」
刹那の声とともに神流がこちらを振り返る。
エルフィアの澄んだ瞳に見つめられ、なんだかばつが悪いけど...。
双葉が満面の笑みで小さく手を振るのが見えた。
「...本当に...怖くないですか...?」
ここで、初めてエルフィアが言葉を発した。
幼い少年のような高い声、双葉が聞いたという声そのものだった。
「ええ。乱暴なことはしませんよ。ね?」
刹那の言葉に全員がうなずく。
エルフィアは少し逡巡するようなしぐさののち、ぴょんと神流の胸から飛び降りた。
そしててくてくと私たちの方へ来ると、ちょんとおすわりをした。
「あ、あの。ボク...エルフィア、といいます。えっと...アラフルーマのこども、です...」
今こそあたしの出番でしょ。
あたしもさっきの神流を真似てゆーっくりとしゃがみ、エルフィアと目をあわせた。
「初めまして、エルフィア。あたしは十六夜。一応ここにいる六人のリーダーなんだ」
「いざよい...さん」
可愛い声で名前を呼ばれて、なんか嬉しい。
「そう。それで、茶髪の子が双葉」
紹介された双葉が、満面の笑みで隣に来てしゃがみこむ。
「よろしくね!エルフィアちゃん!」
「よ、よろしくお願いします。ふたば、さん」
双葉もなんか嬉しそうだな。
可愛いもの好きそうだし、きっとエルフィアが気に入ったんだろうね。
「で、黒髪で着物を着てるのが斎希」
双葉と入れ替わりに斎希が来た。
さすが茶道を生業にしていたらしいだけあって、座る所作が美しいな。
「よろしくね。何か自己紹介しましょうか...そうね、料理はそれなりに得意かしら。あと、茶道には少しだけ自信があるわ」
「いつきさん...さどう?」
「そう、お茶の道と書くの。日本の伝統的な文化よ。興味があればいつでも遊びにいらっしゃい」
「は、はい。いつきさん」
にっこりと嬉しそうに笑う斎希。
さてさてお次は...。
「この金髪のチャラそうなのが燿ね」
「誰がチャラそうだ誰が」
「あんた意外にいねーわ」
いがみながらどっかりとしゃがむ。
しゃがみ方ひとつとってみても個性って出るもんだな。
「あー...えと。私燿な」
座ったはいいものの、なんか居心地が悪そうだ。
「よう、さん」
「おー。...」
エルフィアに名前をオウム返しされて、なおさら気まずそうに頬をかいている。
「ごめんね、エルフィア。燿なんか緊張してるみたいでさ」
「~...」
「い、いえ...こちらこそすいません」
うーんこれは進まない予感。
さっさと次次。
「次...神流か。さっきの銀髪ね」
「かんなさん」
神流へはある程度緊張が和らいでいるのか、エルフィアはそっちを向いてまた一礼した。
神流も相変わらず柔らかく微笑んでいる。
そんなふうに笑えるなら普段から愛想よくしてくれ。
「最後。捺波ね。...捺波、大丈夫?」
燿や斎希の後ろにいた捺波に声をかけた。
「......」
恐る恐る、といった様子でこちらに来る捺波に、エルフィアも思わず身構えた。
触覚が激しく波打っている。
「...える...ふぃあ...?」、
「は、はい...」
少し離れたところにしゃがんだ捺波は、そっと指を差し出した。
エルフィアは、その指にそーーーっと触覚で触れている。
...なんかあれだな、E.〇的な。
「...よろしく...」
「は、はい。...あの、おけが、されてるんですか」
エルフィアの問いに捺波が小さくうなずく。
「...血とか...滲んだり...。エルフィア、白いから...あんまり近づかない方が...」
「あ、いやボクは全然平気ですけど...あの、ボクの毛とか...」
あ、そっか...傷に良くないかな。
すると捺波は寂しそうに首を振った。
「...ありがとう...でも、大丈夫」
そういうと、すっと立ち上がって後ろの方へ戻った。
それを見届けてから、もう一度エルの傍にしゃがんだ。
「この6人が刹那に集められた仲間だよ。急に言われても覚えられないと思うから、これから少しずつ仲良くなれると嬉しいな」
にっと笑いかけると、エルフィアは小さくうなずいてくれた。
へへ、良かった。
「皆さん。紛らわしいことをして混乱を招いたこと、お詫びします」
刹那はエルフィアを抱きあげると、あたしたちに向かって頭を下げた。
「ううん!紹介してくれてありがとうね、刹那ちゃん!それと、エルフィアちゃんもこれからよろしくね!」
双葉、嬉しそうだな。
やっぱり可愛いものが好きなんだろうな。
こうして、謎の8人目の七隊事件は解決した。 

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