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side燿
丸く収まったようにみえたものの、本当に大変なのはその後からだった。
双葉は頻繁にフラッシュバックに苦しみ、その度に私や近くにいる人間が落ち着かせる。なにがトリガーになるかわからないからこれまで双葉と斎希が分担していた家事はすべて斎希がやるようになった。包丁なんて危なくて使わせられないから双葉がキッチンに立つこともめっきり減った。とにかく、フラッシュバックさせないように、そしてしてしまった場合はなにがトリガーになったかをわかる範囲でまとめ共有する。
でも、結局完全に防ぐことなど無理で、双葉は毎日毎日新たなトリガーでパニックに陥っていた。
正直、何かしている間でも双葉のことが気がかりで気が休まるときがない。 それになによりパニックになっている双葉の姿を見るのがなにより辛かった。
あるとき、刹那にそれとなくもう一度双葉の記憶を封じれないかと打診したこともあったが、刹那は悲しそうに、一度溢れた記憶をもう一度抑え込み直すのはほぼ不可能だと言うだけだった。